【Pandemia y música①】
新年明けましておめでとうございます。
激動の2020年を乗り越えたと思いきや、このパンデミックはなかなか収束の兆しを見せません。スペインや中南米でも外出自粛を余儀なくされ、日本と同様にアーティスト達の表現スタイルは変化せざるを得なくなっています。
指揮者の沼尻竜典さんという方が「文化・芸術は水道の蛇口ではない。いったん止めてしまうと、次にひねっても水が出ないことがある」と述べていました。ひときわ日常と音楽が密接であるスペインや中南米の人々も、決して芸術の火を絶やさぬよう色々なアイデアで音楽を発信しつづけ、アーティストの表現の場を守るとともに、困難に立ち向かう人々を勇気付けています。今回は、その中から印象に残ったものをいくつか紹介します。
まずは、最も心を強く打たれたこちらのニュースから。
6月22日、バルセロナのオペラハウスGran teatre del Liceuにて、ある配信コンサートが開催されました。コロナ禍のため無観客を余儀なくされましたが、2292席の全客席は観葉植物で埋め尽くされました。
これはEugenio Ampudiaというマドリード在住のコンテンポラリーアーティストによる作品で、タイトルは「Concierto para el bioceno」。Biocenoという言葉は、人類が地球の生態系や気候に大きな影響を及ぼしている現状をふまえ、人類だけでなく大きな意味での「生命」をすべての中心と捉える概念だそうです。
自然界を制圧しようとしてきた人類がいかに弱く脆い存在かを自覚させられたコロナ禍ですが、それを嘆くのではなく、心穏やかに新しい時代を想起させてくれる素晴らしい芸術作品だと思いました。
ちなみに、これらの植物たちはバルセロナの医療従事者に贈られたということです。
またオンラインフェスティバルも盛んに開催されています。
4月に開催された「JAZZ AUDITORIA ONLINE」 では ”STAY HOME & LISTEN TO JAZZ” をスローガンに89組ものジャズミュージシャンが配信Liveを行いました。このフェスは東京発なのですが、メンツにはレジェンド級のラテンミュージシャンがずらり!キューバからはChucho Vardéz、Omar Sosa、Gonzalo Rubalcabaといった大御所に実力派の中堅López-Nussa兄弟、ドミニカの巨匠Michel Camiloと、オンラインでなければ不可能であろう贅沢なラインナップには驚きました。ブラジルのIvan LinsやMarcos Valle、チリ、スペインからも豪華な顔ぶれが参加しており、ジャズ好きのみならずラテンミュージック好きにも見逃せない大型フェスとなりました。
スペインでは、El Institut Valencià d’Art Modern (IVAM) の発案で、 3月にYoMeQuedoEnCasaFestivalというフェスが開催されました。ライブやツアーがキャンセルになったアーティストたちが#yomequedoencafestivalというハッシュタグを付けてInstagramを通じて自宅から配信を行うというもので、Instagramにアクセスするだけという手軽さから、第二弾、第三弾と続く人気フェスになりました。
内容はポップスに寄りすぎて個人的にちょっと物足りなかったのですが、コロンビアのBomba Esteréoと共作していて気になっていたCarlos Sadnessが偶然観られたのはラッキーでした。
なにしろアーティスト数がかなり多いので、YoutubeやInstagramにたくさん残っているアーカイブでしばらく楽しめると思います。スペインポップスが好きな方はぜひハッシュタグ#yomequedoencafestivalで検索!
アーティスト同士のリモートでのセッションや曲作りも活発になりました。
私もスペイン人の友人からレコーディングのお誘いがあり、初めてリモートでの曲作りにトライしたり(まだ制作中ですが)、メキシコのバンド「La Catrina Son System」のPV撮影にリモート参加させてもらったりと、ステイホームをきっかけに海外の仲間たちとの距離がぐっと近づいたような気がしています。
次回、Pandemia y música②に続く